お知らせ
資産所得倍増プランの危うさ
●金融庁は、NISAの抜本的拡充を軸に税制改革要望を挙げています。本年末に決定されていく予定です。
●日本の家計金融資産における2021年末の現預金率は54%と過去30年間横ばい状況が続いている(米国は13%、英国は27%)、株式と投資信託合計が家計金融資産合計に占める比率(2021年末)は日本が19%、米国54%、英国が42%等である、その結果相対的に日本の家計金融資産の増え方が小さい(過去30年間で日本1.4倍に対して英国2.3倍、米国3.4倍など)指標を示して、今後、日本でも投資で資産を増やしていけるように(資産所得倍増プラン)投資環境を整えている状況です。
●一方で本日報道されている記事には、①公的年金運用(投資モデルケースと言われる分散投資で)する(プロ中のプロであるべき)GPIFがリーマンショック以来の3四半期連続運用赤字②米国FRB報告書で米国債券の取引低迷やドル高を背景に市場急変動リスクが高まっていると報告③世界各国の利上げ姿勢に温度差が出てきているとあります。
●過去数年の市場の動きに比較し現在は既に変調がある中、プロでも投資利益を上げ難い環境で政府が箱を用意したとしても、我々は投資の本質や内容を勉強・理解し、自身の余裕資金の範囲で長期運用を行うべきと改めて感じます。目先では損する場面がありうるリスクについて、NISA運用を推奨するだけでなく、政府側は十分に説明すべきと思います。
物価見通し
●日銀は27-28日の金融政策決定会合で2022年度の消費者物価上昇率見通しを、7月の見通しから0.6%引き上げ、前年比2.9%とすると発表しました。
●黒田総裁は、上昇は一時的、大規模金融緩和政策を維持する、2%が展望できるようになれば出口戦略を示すとコメントしています。
●2013年にスタートしたアベノミクスの下、安定的持続的に2%の物価上昇率を目指す水準に、23年度生鮮食品を除いた予想物価上昇率1.6%とapple to apple で近づいています。
次に更なる物価上昇率を確認したら、当初目標達成したとして、金融緩和政策を辞められるという解釈になるのでしょうか。
国民年金保険料納付期間の延長案
●25日より厚生労働省は、社会保障審議会の年金部会を開き、国民年金の議論を本格化させ、保険料納付期間を現行の20歳以上60歳未満までの40年間から、65歳未満までの45年間に5年延長する案を検討するという報道があります。
●同日、厚労省HPに掲載されたの加藤大臣の発言を要約すると、①5年に一度財政検証を行うが令和6年に次期財政検証が行われることになっている②まだ現時点で具体的な中身が決まっているものではない③令和2年度年金制度改正法の検討規定に、被用者保険の適用の拡大の検討と公的年金制度の所得層再分配機能の強化の検討がありそれを踏まえる、ということになります。
●元々、年金額は人口動態を織り込み、支えられる人と支える人のバランス計算がされて変動します。企業の雇用確保努力義務が70歳がターゲットとなっても、保険料支払対象層を5年スライドさせないと、将来的バランスが保てるかどうかという検討がされるものと思われます。
●一方、年金保険は老齢年金目的だけでなく、遺族・障害年金という万が一の保険的役割を果たしていることも国民は理解し、民間保険との重複での無駄があるかを調べ、何を利用し、どのように、どの位老後資金確保すべきかを、個人それぞれの状況に合わせ、自己管理すべき時代なのだ思います。
NISAで発生する投資損失
FP相談をしていると、積立NISAや一般ISAを始められた方で、節税効果は認識されていても、損失が発生した時に優遇措置はないことに気づいていない方が結構いらっしゃることに最近びっくりしています。政府や金融機関もメリットは強調しますが気を付けたいポイントです。
●積立NISAで非課税になるのは、保有している投資商品を売却する時で、その売却益に対して非課税措置が取られるという事です。保有している期間に、金融機関から表示・確認できるのは評価益(又は損)という仮の損益になります。
●NISA口座から投資商品を売却する際に、売却価格が、基準価格(ザクっといえば毎月積立時の購入加重平均+運用益)を下回った場合、確定申告をしても、譲渡損としての損益通算は出来ません。積立NISA口座は年間40万円だけですから、NISA以外の一般口座で株・投資信託を所有している方は、そちらの売却益とNISAで出た損を通算できると勘違いしている場合が多いです。一般口座での売却益はしっかり課税されますが、NISAの損は補填されません。
●一般NISA(年間120万円まで)も同様です。一般NISAと積立NISAは同じ年に、二つの口座を同時に持つことはできないので、株・投資信託等での高額運用を計画されていらっしゃる方は、どうしてもはみ出した分を一般口座で運用する事になり、錯覚に陥ってしまうケースです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)と積立NISA
どちらを先に始めるべきですかという質問はFP相談の中で良くあります。
●”毎月積立”を”余裕資金”の範囲で行い、且つその積立額を60歳未満で引き出す必要のない方には、iDeCoの満額加入検討をお勧めしています。
●毎月の掛金は所得税控除の対象になります。選択した商品での投資運用益が出なくても、掛金を払い込むだけで、掛金全額が今年の節税につながります。
●今年5月より加入対象は60歳未満から65歳未満に引き上げされ、今月からは会社DCとして既に毎月掛け金運用をされている方でも、iDeCo併用加入が認められています。公務員の方も月額1万2千円まで加入できます。会社に年金制度がある方は、各制度内容と現在の掛金で、iDeCoは月額いくら迄加入できるか異なるので、会社の人事部に確認するのが良いでしょう。